「南極料理人」はなーんにも考えないで見れる映画として大好きです。
お金を払ってわざわざ劇場で見たいかと言われたら絶対嫌だけど。
壮大なストーリーがあるわけじゃないし、臨場感あふれる大音量や大画面の必要もない。
伏線回収もないし、大どんでん返しの結末が待ってるわけでもない。
誰も傷付けないし頭も使わない、見てるとお腹がすいてくる映画。
でも大好きです。
映画見た感想をだらだらネタバレありで語ります。
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「南極料理人」はサラリーマンの映画
南極の過酷な環境で類まれなるセンスと驚異の才能を生かし孤高の料理人としての腕をふるい、人々の心を感動でいっぱいにする究極の料理人、堺雅人。
とかじゃないから。
おっさんの日常がたんたんと描かれてる映画です。
主人公は調理師学校を出て海上保安庁で仕事してる気の弱そうなサラリーマン西村(堺雅人)
家では妻にも娘にも足蹴にされていて家族の仲はいいけど父としての立場はかなり低い。
娘が可愛くて弱いというより完全になめられてるお父さん。
そんなお父さんの勤め先は海上保安庁なんだけど、いわゆるサラリーマンの転勤で南極に1年間勤務しなきゃいけない話が出てくる。
南極に1年単身赴任って…。
さすが海上保安庁、お仕事のスケールが大きいし知らない事だらけ笑
当初行く予定をしていた同僚が出発前にまさかの交通事故にあって急遽西村さんが行くことに。
妻と娘に話したら心配されるどころか笑い飛ばされ誰からも惜しまれることなく「いってらっしゃーい」と乗り気じゃ無さすぎる南極生活がスタートする。
「南極料理人」の舞台は南極ドームふじ基地
西村さんは「料理担当」としてドームふじ基地に配属される。
ドームふじ基地とは?ってなりそうだけど南極でしかできない観測があるからそこにいる、というだけでいわゆる単身赴任の集まり。
他にも研究員とかお医者さんとか総勢8人いる。
まぁね、この生活において彼らの仕事がなんなのかとか一切出てこないからわからなくても問題ない笑
単身赴任先が南極だったおっさん8人の1年間の共同生活映画です笑
はじめはどこか初々しさがあった西村さんも後半は馴染みすぎて8人の「おかん」みたいに朝ごはんとか用意してて笑った。
仕事内容には一切触れないけど、南極という珍しい場所の「寒すぎて菌さえいない」とか「水は雪を溶かして作るしかない」とかうるさくない程度に豆知識は教えてくれてる。
単身赴任先が南極でびっくりしたけど安心の365日
仕事で使うためのデータが悪の組織に狙われて攻撃を受けるとか、食材がなくなって残り200日をサバイバルで生き抜かないとならなくなったとか視聴者を不安にさせる展開は
まったくない。
ゼロ。
対人トラブルもネタにするほどの事は起きないし、せいぜいラーメン食べすぎて麺がなくなっちゃったとか、風呂で水を使いまくる人がいて嫌な空気が流れるとかその程度。
南極という非現実的な場所で生活してるけどおっさんの日常がたんたんと描かれてる。
会社の上司や妻や子供といった家族がいないからなのか、むしろ子どもに返ったかのように楽しく自由にやってる描写が多くて。
真っ白な雪原で真剣な顔して何を始めるかと思えば野球だったり、記念撮影で極寒の中なのに裸になるとか、楽しそう。
良い大人の無邪気な姿にキュンとしてしまう性質をお持ちの方にはそれなりに刺さるところがあるかも。
私は刺さりませんが。
南極料理人は料理がおいしそうでお腹がすく映画
主人公は料理人だし映画にはお腹がすいてくるシーンが数多く収録されてます。
ちょっとお腹すいてきたなーって思いながら「南極料理人」見たら間違いなくメニューはこの映画に出てきたものになるでしょうね、ってくらい。
小鉢までばっちりの品数の多い朝ごはん
料理担当はこの料理でお給料をもらっているのでれっきとした仕事。
南極といういわば閉鎖された環境であらかじめ用意されている食材を管理しながら365日8人の胃袋を栄養を考えて毎日作り続ける。
考えただけで血の気が引く仕事内容なんですが西村さんの作る料理がどれもこれもそんな重圧を感じさせないくらい綺麗で美味しそう。
朝ごはんなんて何度も往復しないと持ってこれないくらいの品数で8人分。
座って新聞読んでるだけでテーブルの上に次々と料理が出てくると思ったらふざけんなよ、運ぶのくらい全員でやれやと思って見ちゃいました笑
「おにぎりと豚汁」
これがもう最高に美味しそうでたまらない。
「南極料理人」といえばおにぎりと豚汁だと思う。
青空が真っ白な雪原を照り付ける南極、つい外が極寒であることを忘れちゃいがちなんですが隊員たちが基地に戻ってきてハフハフ無言でおにぎりと豚汁をかきこむ姿は唾をのんじゃいます。
ずっと家にいて出てきたら微妙だけど、外で汗かきながら必死に仕事したところでお昼ごはんにおにぎりに豚汁って最高すぎるよね。
眼鏡を曇らせながら熱い豚汁をすすっておにぎりをハフハと頬張る姿はいつ見ても食べたくなります。
南極料理人はうるさくない程度にちゃんと調理シーンを見せてくれるのがいい。
お米がつかないように手のひらを少し濡らして塩をつけて「シチャッシチャッ」と水気を感じる音をさせながらひとりおにぎりを握り続けるんだけど台詞一切なし。
ただ西村さんがおにぎりを握り続けてる。
でも彼の丁寧さが出てておにぎりの中に入れる具材はそれぞれ綺麗に小分けされてスタンバイ。
握りながら「次は何を入れようかな」って考える作り手の楽しみさえ感じた。
つい洗い物が面倒だからできるだけお皿やボウルは使いたくないと思いがちだけど手巻きずしが楽しいワクワク感をもたらすのは作業台の見た目の楽しさからなのかもしれない。
まぁ私おにぎり作るとき手につかないようにサランラップで握る派ですけど。
伊勢海老がまさかのエビフライにされる
美味しい料理ばかりじゃなく、突っ込みたくなる料理も出てくる。
それが立派な伊勢海老がエビフライになって食卓に異様な姿で並んだシーン。
前の隊員たちが残していった伊勢海老が発掘されて「今夜は豪華な刺身かな!?」と思いきや料理を一切しない隊員たちは
「エビ」という単語だけを聞き取り「じゃあエビフライだな」「エビフライに決まりだ」と多数決でまさかのエビフライになってしまう。
嘘だろ…と思いながらも反対意見は言わず、そのまま無言で多数決に従うところが西村さんの家庭での姿を彷彿とさせた笑
まぁ実際にエビフライなった伊勢海老を見た隊員たちは「嘘だろ」「普通刺身だろ」って好き放題文句言いながら食べるんですけどね。
それにも何も言わない西村さん。
環境が変わってなかなかワイルドな見た目になって逞しさも感じてたけど、ああ人って根本的には変わらないんだなと思いました。
【まとめ】「南極料理人」映画としては微妙だけど作品としては最高
最初にも話したように何も盛り上がりはなくただ8人のおっさんの単身赴任での生活が少し笑い要素ありでたんたんと続くので正直映画としては微妙。
人間模様や生活をリアルに描いた映画はもちろん色々あるけど考えさせられる深いテーマだったり一言で言えない何かを含んでるじゃないですか。
でも南極料理人はそれがない。
見た後に食事の大切さについて考えるかと言われるとそれほど食に重きを置いて描かれてはいないし。
8人のおっさんのエピソードは小出しで入ってるけど削られすぎて感動するには「何が何だか?」すぎて微妙。
空港で感動の再開をしていても「へー」って流しちゃう程度には何も感じない。
唯一最後まで含みをもたせてそれなりに終わらせてきたのは若い男性隊員が付き合ってた彼女にふられて電話オペレーターのお姉さんにアタックする話。
遠距離恋愛でわかりやすく捨てられた男性隊員は電話の取次ぎをしてくれてた女性オペレーターに声をかけて「あなたと話したい!」と目標チェンジするんだけど
「中身なさすぎて軽いし非現実的」
彼女に振られて寂しくて…だとしてもオペレーターのお姉さんに心変わりする描写が雑すぎて、応援したくなるどころか「お前だれでもいいの?」という気持ちに。
空港にまさかのオペレーターのお姉さんがお迎えに来てくれるんだけど「お前もよく来たな」としか…。
もう少しちゃんと描いてくれたら受け取り方全然違っただろうなとは思うカップルなので残念。
おっと、好きな映画だと言ってるのに辛口になってきちゃったぞ。
映画館で見て欲しいという「映画」でジャッジすると厳しくなるけど、家で退屈なときや疲れた時にてきとーーーに見るのには最高にちょうどいい映画です。